徐州路46号には三メートルにもおよぶ壁と、三階ほどの高さのある大樹に囲まれた、のどかで神秘的、かつ歴史のある建物がある。それが台北市市長官邸だ。
市長官邸は1940年(昭和15年)に建てられた和洋折衷の住宅である。畳張りの和室以外は、ヨーロッパ建築の影響を受けた大小各ホールと書斎があり、ソファーや本棚などが置かれた洋風作りになっている。この市長官邸と台東の庁知事官邸は、台湾ではもっとも完全に保存された日本時代の官邸として知られている。
60年余りの歴史を持つこの市長官邸は、1994年以前ほとんどの市長の住居にもあたり、特別に記念するに値する。ここは当時の市長であった陳水扁氏が「新官邸を発見」という内容の記者会見を開いたことで、1996年に初めて民間に開放されることになった。今では音楽や戯曲、映画、撮影、美術、文学、各種アートの展示会場となっている。また作家や詩人及び文芸作家、そのほか市民の集まりの場でもある。
1999年に馬英九市長が着任した翌年、台北市文化局が成立された。市長官邸では新たな経営設計が行われ、そこは「アート文化センター」へと変化をとげた。こうしてこの静かでおだやかな庭園に、新たな息吹が芽生えたのである。
官邸には飲食サービスを提供するスペースのほか、百人収容可能なホールもある。そのほか小型会議室や日本風の講堂、文芸展示場、陽の当たる書斎も設けられている。正面の庭と裏庭の面積はそれぞれ百坪あまりあり、素晴らしい野外広場となっている。
青竹の廊下、すがすがしく穏やかな池、そよ風の音、雨景色の揃った官邸は、賑やかな都会にありながら、心の静けさを求めるのに最適な空間である。